神経科学-脳と情動

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2017-05-14 1200. 神経科学 コメントはまだありません

神経科学-脳と情動

1 はじめに

私が臨床心理学の勉強を進めていく中で最初に疑問を感じたことが、脳と心 の関係である。特に、精神疾患の学習を進めていく中で脳と情動の関わりが最初の疑問であった。

情動とは、そのときの瞬間的な感情であるが、もし、私たち人間に情動がなかったとしたらどうであろうか?喜怒哀楽の感情が無いということは喜びも悲しみも無いわけであるから、私たちは何も楽しみを感じることもできないわけであり、勿論、悲しみすら感じないということであろう。そして、情動を表出することもないわけであるから、非人間的な動物になってしまうのであろう。

ここでは、主に情動とは何かについてさまざまな学説を基に簡単にまとめておきたい。

2 情動(emotion)の 意味

中島 義明. (2014). 心理学辞典. によると、以下のようなことが書かれている。

感情(emotion)動的側面が強調される場合に用いられてきた用語 であり、 急激に生起し、短時間で終結する反応振幅の大きい一過性の感情状態また感情経験 をさす。

従来、emotion に対応する用語として感情と情動という二つのものが用いられてきたが、これは「感情」という日本語が、感情体験の質的差異を強調する意味で用いられることが多く、また、動物を用いた実験では、感情のもつ認知的成分、すなわち評価的側面は研究対象とはならず、不必要なものであったがために「感情」にかかわる用語を必要としてきたためと考えられる。(略)

 

3 情動とはなにか

「喜怒哀楽」とは感情表現を端的に表した言葉であるが、私たち人間には、愛情、憎しみ、嫉妬、嫌悪、羞恥、羨望、欲望、不安、恐怖など、さまざまな感情を表現することができる。これらの感情表現はいったいどこからくるものであるのか?なぜ、そのような感情が発生するのは何故なのか?

4 さまざまな学説

4.1 ジェームズ-ランゲ(James-Lange theory)説

米国の有名な心理学者であり哲学者でもあったジェームズ William James は、1884年に情動に関する最初の学説を提唱した。
また、デンマークの心理学者であるランゲ Carl Lange も ジェームズに関連する学説を提唱した。これらの学説は、ジェームズ-ランゲ説 James - Lange theory として一般に知られている。その学説は、人間の身体の生理的変化に応答して情動を経験するというものであった。

例えば、泣くから悲しみを感じるのであって、悲しいから泣くというわけではない。感覚系は周囲の現状についての情報を脳に送り、その結果として脳は筋肉の緊張度や心拍数などを変化させる信号を身体へ送り出す。そして、感覚系は脳によって引き起こされたこれらの変化に反応する。

この学説において、情動が生理的状態に緊密に結びついていると仮定して、このことは明白な生理的兆候がなくては情動を感じ取ることができないということを意味しているわけではない。身体の変化に関連のある強い情動については、情動とその生理的表現の間には密接な関連がある。しかし、どちらがどちらを誘発するかは明らかではない。

4.2 キャノン-バード(Cannon-Bard theory)説

ジェームズ-ランゲの説は20世紀初頭には浸透していったが、批判の対象にもなった。
1927年、米国の生理学者キャノン Walter Cannon は、ジェームズ-ランゲ 説を痛烈に批判する論文を発表した。
その後、新しい説を提案した。

キャノンの説は、バード Philip Bard により修正され、情動のキャノン-バード説として知られるようになった。
情動体験は情動表出とは独立して起こりうるという内容のものであった。
情動はたとえ生理的変化が検知されなくても経験されうるということを主張した。

この学説において、恐怖と激怒は異なる生理的反応に関連することが示されているが、両者とも自律神経系の交感神経を活発化する。この事実は、これらの情動が異なる生理的反応によって生じるものであることを証明するわけではない。

4.3 辺緑系

脳には人間の生命を司るさまざまな機能があるが、情動を司る機能も存在するのだろうか?
1930年代頃から、一部の研究者は情動を司る系(システム)も存在するという主張し、その系は、Limbic system (辺緑系)として知られるようになった。

4.4 ブローカーの辺緑系

フランスの神経学者ブローカー(Paul Broca)は、1878年に発表した論文で、すべての哺乳類は大脳の内側表面に周囲の皮質とは異なる皮質領域の集合があることを記載した。それらは脳幹の周囲を包み込むように環状構造を形成するので、ブローカーはラテン語の「境界(limbus)」という語を用いて、この皮質領域を辺緑系 limbic lobe と命名した。
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4.5 ペーペズの回路

1930年代までに、辺緑系の構造の多くが情動に関与するという証拠が示されていた。
米国の神経学者ペペーズ(James Papez)は視床下部と大脳皮質を結びつける “情動系 emotional system” が脳の内側面にあることを提唱した。
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ペペーズの回路では、視床下部は情動表出を制御する。視床下部と新皮質は互いに影響を与え合うように配置されており、情動表出と情動体験を結び付けている。ペーペズの回路では、帯状回が海馬と脳弓を介して視床下部に影響を及ぼす。一方、視床下部は、視床前核群を介して帯状回に影響を及ぼす。皮質と視床下部との連絡が双方向性であるという事実は、ペーペズ回路が情動に関するジェームズ-ランゲ説とキャノン-バード説の両者に合致していることを意味している。

4.6 扁桃体とその他の神経回路

5 引用文献

ベアー, コノーズ., パラディーン, 監訳 加藤 宏司, 後藤 薫, 藤井 聡, 山崎 良彦. (2015). カラー版 神経科学 - 脳の探求 -.

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