臨床心理学研究法 – 量的研究法

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2017-05-14 2100. 研究法 コメントはまだありません

臨床心理学研究法 – 量的研究法

1 はじめに

量的研究法は数字ものごと分析する。数字で表現すること事態が解り易い手法であるが、大きな問題が潜んでいる。数字で心の世界を表現するということは、数字表れない部分を切り捨てることに他ならない。この切り捨てられた部分へのまなざしを持つことが大変重要なことである。

2 量的研究法で注意すべきこと

  • 信頼性と妥当性を常に考慮しながら進めること。
  • 母集団の設定には慎重な検討が必要であること。
  • 変数間で関連があっても、それを因果関係としない思考が必要であること。
  • 得られた結果に対して批判的に考察すること。
  • 統計的有意差が一度見出されると、その結果がひとり歩きする危険性があること。

3 さらなる研究法

近年、量的研究や質的研究という分類を乗り越え、ミックス法という研究手法も提案されている。
真実を追究するために、様々な研究法があるべきである。

4 心を数字で表すことの意味

量的にある心の現象を表そうとすればすれるほど、心の中に取り残された「残余」が浮かび上がる。この残余を無視してしまうのが、量的研究の構造的弱点である。

5 実験的研究

「残余」の影響を取り除く方法が実験的研究である。すなわち、条件の統制という方法である。条件の統制とは、ある現象において、条件を一つだけ変えてみて、その現象がどのように変化するかを確かめることで、その変えた条件が減少にどう影響しているかを調べる方法である。

6 調査

実験的研究では、与えられた条件の影響だけを抜き出すことに成功した。とはいえ、このような条件統制は、実験という土俵でないと難しく、実験は日常生活の場とは異なる。実験という非日常の場における心のプロセスが、現実生活でも同じく起きるという保証はない。そもそも、問題や悩みを抱えている人々が実験に参加するか?という問題がある。

7 臨床研究

実験的研究だけでは問題が解決できない。それを解決したのが、臨床研究という方法である。

7.1 二重盲検 (double-blind)

服薬する人も処方する医師もどちらが実薬かわからない仕組み。

7.2 無作為化 (randomization)

そして、どの患者がどちらの薬に割り当てられているかランダムに決定されることを無作為化という。

7.3 二重盲検無作為化比較臨床試験

上記の二重盲検と無作為化を組み合わせた比較臨床試験の方法をいう。

7.4 二重盲検無作為化比較臨床試験の問題点

臨床場面において、実施する場合の問題として倫理的問題を考慮する必要があるため、インフォームド・コンセント (IC) が求められる。ICでは以下を伝える。

  • 研究の目的と意義
  • 協力してもらう内容
  • 参加は自由意志であること
  • 研究に参加しなくても不利益を被らないこと
  • 参加はいつでも取りやめることが出来ること
  • 副作用にはどのようなことが考えられるか
  • かかる費用の負担軽減について

臨床研究を進めるのは大変であるが、日常生活で感じていることなどを日常場面で調査し属性での比較を行う方法であれば、日常における心の世界を属性での比較という形で浮かび上がらせることが可能になるかもしれない。

8 調査研究の進め方

母集団からの選択バイアスについて研究者は十分に留意する必要がある。

8.1 母集団の設定

  • 調査研究を行う場合、研究の対象者の母集団をどう設定するかを注意深く吟味する必要がある。
  • サンプルが母集団から無作為に抽出されていなければ、サンプルの統計解析を行った結果が母集団の傾向を示しているとは言えない。
  • しかし、調査研究に関して、母集団から無作為にサンプルを抽出することは不可能。
  • 母集団からどのような偏り (バイアス) があってサンプルが選ばれたのかを十分に考察する必要がある。

9 研究目的とサンプル

下記について、研究対象、研究方法、分析方法の項目で具体的に描いていく。

  • これまでい取り組まれていない研究テーマの中には、研究する意味のないものもたくさん含まれている。つまり、意味がないからこれまで研究されていなかったわけである。
  • 研究目的がある程度絞り込まれてきたら、研究目的の吟味を十分に行う。
  • 母集団として何を想定しているか。
  • 母集団からどのような選択バイアスのある対象者なのか。
  • もっとよいサンプルの選び方はあるか。
  • 研究目的に沿って何を測定しようとしているのか。
  • 研究のゴールとして何を考えているか。

10 調査票の作り方

調査票とは、質問紙 (questionnaire) とほぼ同義であり、用紙に一連の質問を配置したものを指す (平井, 2003) 。

11 調査票の構成

調査票は以下のような構成で、複数ページにわたって記入する。

  • 表紙
  • 設問
  • 選択肢

12 調査票の配布方法

以下の配布方法がある。

12.1 調査票調査

  • 集団に対して調査票を配布
  • 記入の説明を受ける
  • 記入が終わったら提出する。

12.2 面接調査

  • 調査票に対して面接者が質問する
  • その回答内容を調査票に記入する

13 調査票調査の手続き

IC について十分な配慮が求められる。

14 調査票の表紙に必要な情報

番号 項目 概要
タイトル 対象や調べる概念について簡単に記す
この研究の紹介 研究の目的や意義について記す
調査票の回答方法の説明 調査票のページ数や回答方法について述べる
研究倫理について プライバシーの保護や研究目的外への不使用など
協力しない権利の保障 調査に協力しなくても不利益が生じないことを述べる
フィードバック 調査結果を知りたい場合、後日結果をフィードバックすること
提出方法 調査票を記入後、どのように提出するかを記す
協力のお願い 調査の意義に触れながら、協力をお願いする
調査実施者 調査実施者の氏名、所属、連絡先を記す

15 測定した尺度の信頼性と妥当性

以下の信頼性と妥当性が採用する尺度において実証されているかを、先行研究等で検討しなければならない。

15.1 信頼性

  • 心の状態が投映されたと推測される量であることは、信頼性と妥当性という考え方で検討される。
  • 信頼性とは、ある同じ心の状態を測定した時に、常に同じ値が得られる程度のことを示している。

量的に確かめられる信頼性には、尺度の測定を2回実施し、その2回の調査得られた値に大きな差がないことを示す再検査信頼性という考え方がある。また、尺度の各項目が同じ方向の程度を表していることを表す指標にα係数というものがあるが、この係数が 0.80 以上の場合、内的整合性があると考え、信頼性を示すと考える。

15.2 妥当性

妥当性については量的に実証することは難しい。

例えば、医師がうつの程度を判定 (これを「外的基準」という) し、その外的基準とうつ尺度得点に関連があれば、うつ尺度が妥当性を有していると推定することができる。これは、外的基準との比較を行うということで、基準関連妥当性という。

また、うつ尺度得点が、うつの構成概念を反映しているかどうかの検討という意味で、構成概念妥当性という。

16 引用文献

齋藤高雅, &元永 拓郎. (2012). 臨床心理学研究法特論 (放送大学大学院教材) (新訂). 放送大学教育振興会.

南風原 朝和, 下山 晴彦, & 市川 伸一 (編). (2001). 心理学研究法入門 – 調査・実験から実践まで. 東京大学出版会.

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