臨床精神分析(1)

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2017-05-14 2400. 精神分析学 コメントはまだありません

臨床精神分析(1)

1 はじめに

ここでは、主に精神分析の定義と精神分析の概要を記す。
それぞれの詳しい内容は以下のメニューを参考のこと。

2 メニュー

項目 概要
ヒステリー(解離性障害) フロイトのヒステリーについて
失策行為と症状行為 やり損ないや癖について
夢判断 無意識的願望と夢
夢分析 夢分析の手順
意識と無意識 構造論からの説明
発達論 発達過程における自我と超自我
神経症の原因 フロイトの神経症理論
精神分析療法-自由連想法  
精神分析療法-簡易型分析療法  
精神分析-催眠療法  
カウンセリング  
行動療法  

3 精神分析(psychoanalysis)の定義

精神分析は、人間の心の理論と治療の実践の両方である。
それは1885年から1939年の間にシグマントフロイトによって設立され、世界中の精神分析者によって開発され続けています。 精神分析には4つの主要な応用分野がある。
 
 1) 心の仕組みの理論として
 2) 精神的問題の治療法として
 3) 研究方法として、
 
文学、芸術、映画、公演、政治およびグループのような文化的および社会的現象を見る方法。
 

Psychoanalysis is both a theory of the human mind and a therapeutic practice. It was founded by Sigmund Freud between 1885 and 1939 and continues to be developed by psychoanalysts all over the world. Psychoanalysis has four major areas of application:

  1. as a theory of how the mind works
  2. as a treatment method for psychic problems
  3. as a method of research, and
  4. as a way of viewing cultural and social phenomena like literature, art, movies, performances, politics and groups.

4 精神分析とは何か?

前田 重治. (2003). 『続 図説 臨床精神分析学』の「精神分析の定義」では以下の様に書かれている。
 

精神分析はあくまで 臨床経験が中心 にあるもので、そこではパーソナリティや性格、精神現象、身体現象、ひいては行動を、 無意識過程の存在を仮定する ことによって解明しようとする。その観察の方法論としては、 自由連想法 を用い、発達的、力動的、経済論的な観点に立つ。精神分析とは、このような方法、経験、理論から導き出された 治療技術 である。

 
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5 意識 と 無意識

フロイトによれば、人間の心というものは氷山みたいなもので、 意識(consciousness) の水面上に現れて見えているのは、そのほんの一部分に過ぎないという。心の大部分は、水面下の見えないところにかくされていて、そこは 無意識(unconsciousness) の領域である。その中でも、ある努力によって、必要なときに意識へ取り出す(浮かべる)ことのできる部分は 前意識(preconnsciousness) と呼ばれる。

6 フロイトの基礎理論

フロイトは、『ヒステリー研究』の症例をとおして、 ヒステリー症状は心理的にかくされた意味 があり、ふつうの形では表現できないで抑圧されている心の働きの代用品であることを示した。 つまり、患者には多大な 感情量の貯留 がみられ、 内的興奮は身体症状へと転換されることで防衛 されている。その際に抑圧され忘却されている外傷体験を初期には 催眠法 を用いて、のちに 前額法(注意集中法) によって、おさえる力をゆるめさせることで表現させ、 激しい感情とともに想起させると症状は消失する ということが観察された。
(催眠性カタルシス:hypnotic catharsis:おしゃべり療法)

このように隠された意味が意識化されると症状が良くなっていくことが確かめられた。これが精神分析療法のはじまりとされている。
 
現在では「ヒステリー」とは言わず、ICD-10 では解離性(転換性)障害 と記述されている。
解離性障害についてはこちらの記事を参照

6.1 失策行為と症状行為

ある行動を行っているときに別の無意識的意図が作用した場合、失策行為や症状行為が出現してくる。
無意識的な願望や感情の変形した表れであるとみることができる。

『日常生活の精神病理』「生活心理の錯誤」(1901) 

6.1.1 失策行為

思い違い、聞き違い、書き損ない、読み損ない、言い損ない、度忘れ、置き忘れ、紛失など

6.1.2 症状行為

癖のこと。例えば、頭をかく、貧乏ゆすり、爪噛み、耳や鼻をほじる、無意識的な手遊び、メガネをかけ直すなど

6.2 夢判断

フロイトは、数多くの研究をとおして、夢分析を行い、夢は無意識的願望の変装された代用品であり、そこでは無意識的願望の充足がみられていることを明らかにした。夢判断は顕現夢(manifest dream)を手がかりとして、無意識的な潜在内容を掘り出してゆくことである。これは夢を変装させている夢作業や象徴を解読してゆくことである。

6.3 構造論の考え方

エスの下部が開いているのは、そこから身体領域の本能エネルギーが取り込まれるためのものである。エスの領域に流入してきたエネルギー(リビドー:libido)は、意識へと向かう際に観念を与えられ、願望として意識化されるようになる。

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そのエネルギーは、外界の対象へ興味(関心)としてさしむけられたり、筋肉運動を支配している自我に働きかけて行動となったりして、外界へ放出される。

 

6.3.1 イド(id : Es)

無意識的なものの代表。

  • 幼児期以来、抑圧されたもの(固有の抑圧)
  • 古い先祖の時代から抑圧され受け継がれてきたもの

1)本能エネルギーの貯蔵庫 (~したい、~がほしい)
2)一次過程が支配(現実、時間、秩序の影響を受けない)
3)快感原則が支配(衝動の即座の満足追求)
 

6.3.2 自我(ego : Ich)

外界とエスを仲介する領域(心の中心部分)

  • 現実原則が支配(知覚機能-現実吟味)
  • 二次過程が支配(知覚、注意、判断、学習、推理、想像、記憶、言語などの現実的思考)
  • 逆充当(エスの外界への突出の見張り)
  • 不安(現実、エス、超自我からのおびやかし-危険信号)の防衛、処理
  • 統合機能(適応機能-パーソナリティの統合)

 

6.3.3 超自我(super ego : Uberich)

幼少期の両親のしつけの内在化されてできた領域
1)良心の禁止(~してはならない)
2)理想の追求(~であれ、~しなくてはならない)
 

6.3.4 意識-無意識とエス-自我との関係

  1. 意識的・・・自我、超自我の一部
  2. 無意識的・・・自我、超自我、エスの一部

6.4 力動論の考え方

6.4.1 力動論とは

人間の心身の現象や行動を、無意識の世界までも含めて、力動的な因果関係の仮定のもとに理解してゆこうとする考え方。
夢も、症状も、連想も、すべて無意識的な力動的関係の結果として生じている。そこでの作用を現実的に執行してゆくのは自我の働きである。

6.5 適応論の考え方

6.5.1 適応論とは

自我 は、 現実エス超自我 という三つの領域から刺激をうけて、そこに 現実不安エス不安超自我不安 という 三種の不安 を生じることになる。
そこで、それぞれの 不安を防衛 し、適応するためにさまざまな 防衛機制 が働くことになる。

適応とは、環境に適合して生活することである。さまざまな欲求不満や葛藤にさいして、怒り、憎しみ、悲しみ、反感、落胆、不安などのいろいろな不快な感情が生じてくる。これは意識することができることもあるが、しばしば無意識レベルにとどまっている、これらの感情の嵐をしずめ、心の安定をはかるために、自我の領域において行われる処理の働きが適応である。
 
適応には、社会的に他人と協調し、他からも受け入れられている形の外適応と、自分の内的な価値基準や要求水準にてらして自己受容、満足、自尊心、幸福感などが得られる内適応とがある。

6.6 発達論の考え方

年齢 一般的発達 リビドー 自我 エリクソンの段階
依存期 口愛期 とりいれ 信頼感
  ・不安-無力感 ・吸う 同一視 不信感
  ・皮膚接触 ・のみこむ 投射 得る-希望
・授乳 ・吐き出す   一極性
  ・離乳 ・かみつく   早熟な自己分化
自立期 肛門期 反動形成 自立性
  ・トイレ・トレーニング ・貯留 うちけし 恥・疑惑
  ・筋力の支配 ・排出 隔離 保持・放出-意思
  ・判断力   否認 両極性
  ・言語-思考   退行 自閉
  ・現実吟味の始まり      
役割取得期 男根期 抑圧 積極性
  ・男・女の区別 ・男根的誇り 置き換え 罪悪感
  ・探索行動 ・去勢不安 昇華 思い通りにする-目的
  ・自由・孤立の欲求 ・男根羨望 同一化 真似る
  ・環境の支配 ・去勢コンプレックス とりいれ 遊戯的同一化
      超自我形成 エディプス的
        空想同一性
適合期 潜伏期 超自我の修正 生産性
  ・知的拡大   から 劣等感
  ・外的世界の発見   自我の確立 ものを作る-適格
  ・ギャングエージ     労働同一化
        同一性喪失
12 青年期 思春期 幼児期への一時的退行 同一性
  ・自己意識の拡大   知性化 同一性拡散
  ・第二次成長   合理化 自分自身である-忠誠
  ・大人への反抗     自己確信
  ・理想の追求     同一性意識
  ・心理的離乳 性器期    
         

6.6.1 口愛期

生後1歳半くらいまでの乳児期。
リビドーが主として口と唇を通じて満足される時期。前半は母親の母乳を吸って快感を得る「吸う」リビドーが、後半には「噛む」リビドーが出現する。
 
そして、固着による口愛期性格としては、甘えん坊で依存的、欲求がましく落ち込みや癇癪を生じやすい性格が形成されると考えた。
 

6.6.2 肛門期

生後1歳半~3、4歳頃。
トイレ・トレーニングの時期であり、幼児は自ら排泄を意識してコントロールすることを覚え、そこから快感を得る。その保持と排泄をめぐって、親のしつけの要求に従うか否かの葛藤の生じる時期である。
 
固着による性格の偏りは、肛門期性格と呼ばれて、過渡の几帳面、潔癖、頑固、または倹約などの特徴をもつといわれている。フロイトは脅迫神経症の素因は、この段階にあるとしている。
 

6.6.3 男根期

3歳~5歳くらいの時期。
男根の有無に関心が向かい、性的なアイデンティティが形成される時期であるといわれている。異性の親に対する筋親愛と同姓の親に対する対抗意識というエディプス葛藤が問題となる。この葛藤が未解決の男性が抱えるエディプス・コンプレックス、女性のエレクトラ・コンプレックスは、神経症の形成に多大な影響を与えるとフロイトは考えた。
 
固着による男根期性格は、傲慢で攻撃的、自分の力を過渡に誇示するなどの特徴をもつとされている。
 

6.6.4 潜伏期

6歳~12歳頃までの時期。
エディプス・コンプレックスが抑圧された後、リビドーは不活発となり、成熟期を迎えるまで潜伏する。
 

6.6.5 性器期

青年期以降。
リビドーは異性対象に向かい、精神的にも肉底敵にも一人の異性を愛することが課題となる。

6.7 経済論の考え方

心のエネルギーを量的な観点から、強い(大きい)、弱い(小さい)という見方をする。
全体エネルギーの総量は一定であり、一つの領域が強くなると、他の領域は弱くなると考えられている。

6.7.1 エスが強すぎる

衝動的、感情的、幼児的な行動の性格

6.7.2 超自我が強すぎる

良心的、自己懲罰的、抑圧的、理想主義、完全欲的な行動や性格

6.7.3 自我が強い

理性的、合理的、現実主義的な行動や性格

7 引用文献

前田 重治. (1996). 図説 臨床精神分析学: 株式会社 誠信書房.
前田 重治. (2003). 続 図説 臨床精神分析学: 株式会社 誠信書房.

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