認知行動療法-抑うつのパラドックス

Home » 2510. 認知行動療法 » 認知行動療法-抑うつのパラドックス
2017-05-14 2510. 認知行動療法 コメントはまだありません

認知行動療法-抑うつのパラドックス

1 はじめに

ここでは私自身の反復性うつ病性障害の体験を含めて抑うつのパラドックスから思考と気分の関係について述べてみたい。
 

2 反復性うつ病性障害の体験

反復性うつ病性障害とは、ICD-10 によれば過去にうつ病のエピソードがあり、躁病のエピソードがないもので、うつ病を繰り返す症状として特徴付けられている。具体的には、以下の条件を満たさなければならない。
 
 

(a) 反復性うつ病性障害の診断基準を満たし、現在のエピソードがうつ病エピソードの診断基準を満たさなければならない。
(b) 少なくとも2回のエピソードが、短くとも2週間続き、はっきりした気分障害のない数ヶ月間で隔てられていなければならない。

2.1 何もかもが嫌になる

日々のストレスから、ある日突然、朝起きられなくなった。それは3回目のうつ病の発症であった。心配する家族に対しても話しをしたくない気分になり、病院へも行きたくない、食事もしたくない、最後は死にたいとまで思っていた。勿論、睡眠も障害され眠ることもできない。食欲、性欲、物欲などすべての欲求が失われた状態になった。まるで別人の人格になったかのように変化する。勿論、何かに対する興味があるわけではなく、何事に対しても回避と引きこもりへと変わっていく。

2.2 喪失感が抑うつを招く

顕著な抑うつ症状が起きる前から、実は抑うつ傾向は始まっていると思われる。それは例えば、以下のような考え方を常に持ち続けているからだと思われる。

  • 仕事でも趣味でも何でも完全にやり遂げようとする考え方
  • そのために自らが高い目標を掲げてしまう
  • さらに、躓くと「自分は駄目なんだ」と思い込んでしまう
  • 「自分には無理なんだ」
  • 「自分には価値がないんだ」
  • 「自分は一人ぼっち」

 
 
など、どんどん負のスパイラルのように無気力感が押し寄せてくるのである。このことは、自分の価値観が否定されたかのごとく、「生きていてもしょうがない」というような短絡的な発想に繋がっていると思われる。つまり、本人にとっての幸福の属性を失ったと考えられる。
 
 

抑うつ患者には特別な歪曲が認められる。世界に対する否定的な考え、自分自身に対する否定的な概念、将来に対する否定的な評価が働いているのである。これが認知の3徴である。

 
 
歪曲された評価は、本人の個人領域の縮小につながり、それによって悲しみが導き出される。
喪失を知覚することにより、悲しくなるということを考えた場合、他の抑うつ症状に対しても喪失感からどのように生じているかを考えるのに役に立つ。引きこもりや回避などの現象も誘因が存在するとされている。
 
 

2.3 うつ病のパラドックス

発達の過程で、親を失ったり仲間から拒絶され続けたりするなど、ある種の好ましくない生活状況のために敏感になっていることがある。はっきりとは顕在化していない他の好ましくない状況が、同じようにうつ病に対する脆弱性を作り出していることもある。こうした外傷体験のために、後の人生で類似した状況に出会うと過敏に反応してしまうような素地ができあがる。そうした状況が起こると極端で絶対的な判断をしてしまう傾向が身につくのである

 
 

2.3.1 誘因となる出来事

多くの研究では以下のようなことが誘因に成りうると指摘している。

  • 愛着を示していた人との関係が破綻すること
  • 重要な目標が達成できないこと 
  • 経済的逆境に陥ること
  • 身体的障害にかかること
  • 社会的地位や名誉を失うこと

 
 

重要な対人関係や職業、または他の活動の中で現実と予測とのギャップを繰り返し体験しているうちに、次第に抑うつ状態が強まってくることがある。簡単に言えば、喪失感は非現実的な高い目標と誇大的な予測の結果生じてくることがある。

 
 

2.3.2 抑うつ状態の連鎖反応

肯定的に考える力が弱まってくる=喪失感が大きくなってくると肯定的な考えが極端かつ硬直化しているほど、個人領域の喪失の衝撃も大きくなる。そして、この領域が更に拡大し続けていくと、連鎖反応が生じると言われている。それは、例えば、仕事がきっかけであったものが自分自身の価値そのものを否定するような考え方に変化していく。
 
 

2.3.3 自分自身に対して

抑うつ患者は不幸な出来事について考えていくうちに、次第にこれらの出来事が自分自身に対して何を物語っているのかを深く考えるようになるといわれている。それも、このような出来事の原因が自分に原因があるのではないかと考える傾向がある。そうすると、さらに個人領域の喪失が大きくなり、自分自身の欠点を発見しようとする。そして、自分自身の評価を低くしてしまう。
 
 

2.3.4 ペシミズム

抑うつ患者は将来の不幸を予測して、それがその時点で起こっているかのように、またはすでに起こってしまったかのように体験してしまう特別な傾向がある。

 
ペシムズムを引き起こすのは、患者の否定的な自己概念から生じてくる。
 

喪失という外傷体験は、自分に何らかの欠陥があるということが伝わっているためにとくに深い傷になる。患者は、自分自身を統合する部分に欠陥があると考え、そのためにそれが永遠のものであると考える傾向がある。

 
 

2.3.5 認知の3要素

上記のまとめになるが、うつ病患者に特有な思考の特徴を以下に挙げる。

  • 過度の自責感や罪悪感といった、自己に対する否定的な考え方や見方
  • ペシミズムを代表とする事故を取り巻く世界に対する否定的な考え方や見方
  • 絶望感を中心とした将来に対する否定的な考え方や見方

2.3.6 うつ病患者の自動思考の癖

自動思考 は、日々の生活する場面で問題となる場面に出会うことにより多様な自動思考が働く。特に、うつ病患者の自動思考には以下のようなものがあることが知られている。

  • 自分にはできない
  • 自分は無能
  • 親や夫 (妻) として失格
  • それは無意味なこと

 

上記の他にもいろいろあるが、自動思考の特徴は明確であり具体性を持っているということである。

2.3.7 思い込み

自分勝手に否定的に思い込んでしまうことで、さまざまな場面で共通して認められる考え方とされている。
 
 

  • ~すべきである
  • ~しなければならない
  • ~してはならない

 
このような思い込みがバックグランドに存在していると考えられている。
 
 

2.3.8 失感情

私の経験からもうつ病が発症するまでには長い年月がかかるのが普通であると思う。うつ病というのは、喜怒哀楽に関する感情を喪失した状態を指しているが、この感情が長い年月をかけて次第に薄れていき、悲しみと怒りだけが次第に強まっていく。
 
 
そして、悲しみや怒りの考えが繰り返し生じることから、その強さも次第に強くなっていくように感じた。そうすると今度は、抽象的な概念ではなく明確、かつ絶対的な表現に変わり、思考も極端な考え方に変わっていく。
 

2.3.9 思考や動機の変化

私自身のうつ病の経験から言えば、抑うつ症状が現れてくると、すべての行動が「~しなければならない」というような形での行動形態をとることになる。具体的には、普通の状態であれば自発的に行えた行動が、抑うつ症状が現れてくると、自分自身を強制しなければならないことに気付きながら、「会社にいくべき」とか「勉強しなければならない」などのように自分自身を言い聞かせるような方法で行動する。これは、会社にいくことも勉強することも正しいということに疑いなく信じている結果からくるものであるとも考えられる。それは周囲の人も同じ行動をとることや周囲の人に行動するように言われて、正しい行動として疑いをもっていないことにもなる。このようなことから、心ではブレーキが掛かっている状態である。
 
さらに抑うつ症状が進んでいくと、すべての物事に対して否定的な考え方を示すようになってくる。つまり、努力しようとすることさえ拒むような状況になっていく。なぜならば、そのこと自体が意味のないことであることを信じているからである。
 

2.3.10 自殺企図

私もうつ病が酷かった時には自殺を考えました。今になってみれば何故そんなことを考えたのかさえ不思議なことですが、自殺企図はすべての事柄から逃避するための最終的な行動の現われである。学業、仕事、家庭、地域・・・など、自分自身との関わりや改善をすべて否定し、改善され良くなることも信じられない状況に陥る。
 
何故、うつ病患者が自殺を企図するかと言えば、「自分は無価値な人間」というのが根底にあると思われる。つまり、
 

  • 自分自身が死んでしまえば、周りの人々は幸せになれる、
  • 未来はない
  • こんな人生はくだらない

 
こんなことを考え、自殺を企図する。
 
ただし、うつ病患者のすべてが自殺企図するわけではない。
 

3 引用文献

アーロン・T・ベック. and 大野 裕. (1990). 認知療法 – 精神療法の新しい発展 (認知療法シリーズ), 岩崎学術出版社.

石丸 昌彦. and 広瀬宏之 (2016). 精神医学特論 (放送大学大学院教材), 放送大学教育振興会.

大野 裕. (2011). はじめての認知療法, 講談社現代新書

坂野 雄二. (2003). 認知行動療法, 日本評論社.
 
 

4 ホームページについて

このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
 
 
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
 
 

  • 患者様のための情報提供サイトではありません。
  • 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
  • 研究者、大学教職員、大学院生、学生のための情報提供サイトではありません。

 
 
したがいまして、このサイトは私のためのネットノートなので、読みにくかったり誤りもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると嬉しく思います。
このホームページに掲載している図表、画像、文章に関しての転載、複写は自由ですが、いかなる結果が生じても責任を負えませんことを予めご承知おきください.
 
 
なかなか、まとめが進んでおらずリンクが機能していないページがあったり、書きかけのページがあったりします. 日々、アップデートしております.
 
 


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Valid XHTML 1.0 Strict

 
  
 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です